白シャツ女子                       横田 尚美 


  写真家ウイリアム・クラインが撮った映画『モード・イン・フランス』(仏1985年)の冒頭に、

 短時間でコミカルに、それでいながら、ものの見事に女性服の現代化を表したシーンがある。

 (「モードが人をつくる その2 モード史概観」)。

 女性服の現代化とは一人で服を着られるようになったことだと言いたいのだ。

 

  
女性の白いシャツと言えばすぐに思い浮かぶのが、19世紀末から20世紀初めにかけて、

 アメリカで人気を博したイラストレーターのチャールズ・ダナ・ギブソンだ。

 彼は、コルセットでウエストを細く締め上げながらも、白いブラウスに蝶ネクタイ、

 長いフレアスカートで、ゴルフをしたりデートをしたり、快活に生きる新しい女性像を描いた。

 ただ、そのブラウスをよく見てみると後ろ開きと思われる場合が多い。

 

  もちろん労働者階級の女性はもっと脱ぎ着のしやすい服を着ていたかもしれないが、

 こういう人々のことは余り資料が残っていないからよくわからない。少なくとも、

 現存している当時の後ろ開きブラウスを見る限り、ホックが並んでいて一人では着られそうにない。

 

  1914年に第一次世界大戦が始まる。この大戦は、

 色々な意味でそれまでとは比べられないくらい大規模で、男性は次々に徴兵されて行った。

 若い女性が銃後を担うことになり、徴用され、お屋敷からメードがいなくなる。そのために

 働く女性たちも奥様方も、皆一人で簡単に短時間で脱ぎ着のできる服を必要とすることになった。

 大戦中の写真を見ると、いつの間にか女性のブラウスが前開きになっていることに気付く。

 

  この時代に女性の望みを形にしてビジネスを成功させたのが、シャネルだ。

 彼女は、素材やディテールに男性服の機能性を活かして、新しい女性服をつくった。

 シャネルは次の大戦の間に引退しスイスに亡命するのだが、
 諸事情により1954年にカムバックを果たす。

 それは「ニュールック」のディオールやはさみの魔術師バレンシアガ、

 ヘップバーンのデザイナーのジバンシイら男性デザイナーが活躍している時だった。

 彼らが生み出す、女性美を人工的に表現したドレスに比べ、

 シャネルの最出発を飾ったのはありふれたテーラードスーツだったから、

 ファッション雑誌の反応は冷たかった。

 

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  さて、とうの女性たちはどちらを支持したか…。

 21世紀の今では、

 スカートばかりかパンツも組み合わせて、

 多くの女性が男性同様にテーラードスーツを

 着ているのだから一目瞭然だ。

 

 シャネル自身は、より女性らしい

 シャネルスーツを完成させて行くことになるけれど。

 そのカムバック・コレクションの作品の写真で

 有名なのは、テーラードスーツに白いシャツ、

 蝶ネクタイでモデルがポーズを取っているものだ。

 

 そもそも白いシャツは英語で言えば、

 ホワイトシャツである。ホワイトシャツがなまって

 日本ではワイシャツと呼ばれ

 サラリーマンの代名詞となった。

  

 だから女性が白いシャツにネクタイをするという服装は、50年前も100年前も、

 男性との距離を縮めた新しい女性像を示すのである。 

 

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