「ブラウス」の意味すること                横田 尚美 


  このコラムの読者は気付いて下さっていると思うが、

 新作アイテムに合わせてコラムの内容を考えている。

 店主が、「今度はバルカン・ブラウスです。」と連絡してきた。

 その言葉を聞いたら、大体どんなブラウスか頭に浮かぶ。

 

 けれど、同時にもやもやした感じがあって、

 家にあるファッション辞典や事典のたぐいをめくってみると、

 バルカン戦争(1912 〜13年)によって流行したブラウスとして、その特徴が説明してある。

 

 次に、英語や仏語の同様の辞典を調べるが、この用語は載っていなかった。

 一般的な英語や仏語の辞書、百科事典などにも、もちろん戦争は出ているが、

 その名のついた服など出ていない。やっぱりだ。

 

 もやもやは、この言葉が日本でしか通用していないのではないかという疑いだった。

 

  辞書に載っていないからと言って、現地に行って実際に聞いてみないと

 本当のことはわからない。

 ただ、カタカナのファッション用語がやみくもに使われていることも事実だ。

 

 誰もが疑問を持たずに使っている「ブラウス」という言葉が、まず怪しい。

 

 そもそも仏語だが、この発音は英語である。

 そこで、オックスフォードの英英辞典を調べてみた。

    1. [a] 麻や綿製の軽くてルーズな上衣

 フランスの女性労働者が着ている有名な青いブラウスのことだが、

 イギリスではもっと大雑把に、これに似た服を呼ぶのにも使う。(一例として、

 1875年の「下層階級は、
キャンバス地などのブラウスか小さなフロックの一種を着る。」

 という用例が紹介されている)

      [b] - 1 アメリカでは、ウエスト丈の服、又は普段着のミリタリー・コート。

      [b] - 2 兵士やパイロットの戦闘服の上衣

    2. 転じて、フランスの労働者

    3. 女性や少女が着るルーズフィットのボディス(上衣のこと)

 通常、スカートのウエストに入れる。

 かつては「ブラウス‐ボディス」と呼ばれることもあった。(以上、筆者訳)

 

  何気なく使っているのは、3の意味ということになるが、

 それが最後に出てくることからも、元々の意味はそうではなかったということがわかる。

 

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  待てよ!

 「バルカン・ブラウス」の「ブラウス」は、

 ミリタリーウェアのことではないのか。

 

 バルカン戦争の時に流行した形の

 ブラウスなどというのは、

 日本人の思い違いかもしれない。

 

 それについて

 きちんと調査したわけではない。けれど、

 学ランもセーラー服も元を正せば

 ミリタリーウェアだ。

 トレンチコートもピーコートもそう。

   

 戦争がもたらす服は機能性が高いから、日常に取り入れられることは珍しくないのだ。

 

  もちろんファッション用語なんて大した問題ではない。

 でも、どんなことでも時々は立ち止り、疑い、振り返り、確かめた方がいい。

 

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